岡山家庭裁判所 昭和53年(家)923号 審判 1978年10月06日
国籍 米国
住所 ワシントンD、C
申立人 ジェームス・E・ニシカワ
国籍・住所 右に同じ
申立人 コニー・P・ニシカワ
本籍 岡山県阿哲郡
住所 岡山市
未成年者 村田春子
主文
申立人らが未成年者を養子とすることを許可する。
理由
一、申立人らは、主文同旨の審判を求めた。
二、本件記録及び申立人らに対する審問の結果によると、次のとおりの事実が認められる。
(一) 申立人らは、いずれもアメリカ合衆国カリホルニア州に生まれたアメリカ合衆国人で、両名は、一九七二年一二月三〇日に同州において婚姻し、現在肩書住所に居所している。
(二) 未成年者は母村田礼子の子として岡山県○○市で出生した日本人で、現在上記乳児園に収容されている。
(三) 申立人らは、婚姻以来子が生まれず、かつ、申立人コニー・P・ニシカワがラツパ管摘出をしたため、今後実子を得ることが困難になつたため、日本人と養子縁組をしようと考えていたところ、知人の紹介で未成年者を知り、昭和五三年五月頃その親権者である母親村田礼子の代諾を得た。
(四) 申立人ジェームス・E・ニシカワは、ワシントン市において歯科医師として、年収一〇三、四三一ドルを有するほか、配当金、家賃等の所得を有し、預金証券、不動産等二四〇、三七三ドルの財産を有している。
三、ところで申立人は、いずれもアメリカ合衆国人であり、未成年者は、日本人であつて、本件は、いわゆる渉外養子縁組であるから、裁判管轄権及び準拠法について考える。
申立人らの住所は、いずれもアメリカ合衆国ワシントンD・C、であるが、未成年者の住所が日本に存するから、日本の裁判所が裁判権を有し、当家庭裁判所にその管轄権があることは明らかである。
次に本件養子縁組の準拠法について考えるに、法例一九条一項によると、養子縁組の要件については、各当事者につき本国法による旨規定されている。従つて申立人らについてはワシントンD・C・法、未成年者についてはわが民法によるべきところ、養子縁組に関するアメリカ合衆国国際私法については、一般に養子又は養親の住所のある州(又は国)が養子決定の管轄権を有し、その際の準拠法は当該州(又は国)の法律、即ち法廷地であり、この養子決定の管轄をもつ州(又は国)で、かつ法廷地法に従つてなされた縁組は、他の州(又は国)においても承認されるべきものとなつている。この点ワシントンD・C・においても同様であると解される。本件養子縁組については、結局法例第二九条にいわゆる反致が成立し、養親となるべき申立人らについても法廷地法である日本法が適用されることとなる。
四、よつて日本法によつて審査するに、申立人らが未成年者を養子とするに妨げとなるべき事情はなく、養子縁組の成立は、上記二において認定した事実に徴し未成年者本人の福祉に合致するものと認められるので、本件申立は理由があるから、これを許可することとし、主文のとおり審判する。
(家事審判官 小林定人)